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ホワイトペーパーの作り方完全ガイド|構成・デザインから「ブランドを高める」配布戦略まで

ホワイトペーパーの作り方完全ガイド|構成・デザインから「ブランドを高める」配布戦略まで

「リード獲得のためにホワイトペーパー(お役立ち資料)を作りたいが、何から始めればいいかわからない」 「作ったものの、ダウンロードされずに放置されている」

BtoBマーケティングにおいて、リード獲得(見込み客情報の獲得)の要となるのがホワイトペーパーです。しかし、ただ闇雲に資料を作っても成果は出ません。ターゲットに合った「種類」を選べていないか、あるいは作った後の「届け方(配布戦略)」が設計されていないことが失敗の主な原因です。

また、ホワイトペーパーは単なるリスト集めの道具ではありません。 企業の専門性を示し、業界内でのプレゼンス(存在感)を高める「最強のブランディングツール」にもなり得ます。

この記事では、自社に最適なホワイトペーパーの「選び方」や実践的な「制作手順」に加え、成果を最大化するための「具体的な配布チャネル」と「公開戦略」までを網羅的に解説します。

目次

そもそもホワイトペーパーとは?(定義と役割)

具体的な作り方に入る前に、言葉の定義と、よく混同される「営業資料」との違いを整理しておきましょう。

言葉の由来とビジネスにおける定義

本来「ホワイトペーパー(White Paper)」とは、政府や公的機関が発行する「白書(報告書)」を指す言葉です。実態調査や政策を報告する公的な文書としての意味合いがあります。

しかし、現在のBtoBマーケティングの文脈では、「企業が顧客の課題解決のために提供するノウハウ資料や調査レポート」を指します。

「営業資料」との決定的な違い

もっとも重要な点は、営業資料とは「目的」と「ベクトル」が逆であるということです。

営業資料(Service Guide)

  • 目的:自社商品を売り込む(Take)
  • ベクトル:企業 → 顧客(自社がいかに優れているかを説く)
  • 使う場面:商談フェーズ

ホワイトペーパー(White Paper)

  • 目的:顧客の課題を解決する(Give)
  • ベクトル:顧客の悩み ← 企業のノウハウ(顧客の成功を支援する)
  • 使う場面:集客・リード獲得フェーズ

ユーザーは、自分の個人情報(氏名やメールアドレス)を入力する対価として、有益な情報を求めています。ここで自社サービスの宣伝ばかりが書かれた資料を渡してしまうと、「期待外れだ」と信頼を損ない、その後の商談にはつながりません。

ホワイトペーパーの本質は、見込み客への「Give(価値提供)」にあることを念頭に置いて制作を進めましょう。

【種類と選び方】自社が作るべきホワイトペーパーはどれ?

一口にホワイトペーパーと言っても、その内容は多岐にわたります。 自社の目的が「とにかくリードの数が欲しいのか」、それとも「質の高い検討層が欲しいのか」によって、選ぶべき型は変わります。代表的な4つの型と、選び方の基準を見ていきましょう。

1. 課題解決型(ノウハウ・教科書)

特定の業務課題に対する解決策や手順を解説したものです。

  • 内容例: 「オウンドメディアの始め方ガイド」「失敗しないSaaSツールの選び方」
  • ★選び方:「リードの数」を優先したいならコレ。
    • ターゲットの悩み(検索キーワード)に直結するため、幅広い層(潜在層)にダウンロードされやすく、母集団形成に最適です。

2. 事例紹介型(ケーススタディ集)

自社サービスを導入して成功した企業の事例をまとめたものです。

  • 内容例: 「製造業のDX成功事例 5選」「他社はこう解決した!導入ビフォーアフター集」
  • ★選び方:「リードの質(検討度)」を優先したいならコレ。
    • 「他社の事例を見たい」というユーザーは、すでに導入を具体的に検討している可能性が高く、商談につながりやすい層です。

事例集を作るには、まず質の高い『導入事例記事』が必要です。読まれる事例の構成やインタビュー項目については、以下の記事で詳しく解説しています。
【完全版】成果が出る導入事例の作り方|必須インタビュー項目と構成・活用法

3. 調査レポート型(リサーチ)

独自のアンケート調査や、業界動向の分析結果をまとめたものです。

  • 内容例: 「2025年版 マーケティング意識調査」「〇〇業界の平均年収レポート」
  • ★選び方:「権威性・拡散」を狙うならコレ。
    • 独自データにはニュース価値があるため、プレスリリースやSNSで拡散されやすく、メディアからの被リンク獲得も狙えます。

4. 用語集・カオスマップ型

業界用語の解説や、主要サービスをマッピングした資料です。

  • 内容例: 「Webマーケティング用語集 100選」「人事管理システム カオスマップ」
  • ★選び方:「長期的なストック」を狙うならコレ。
    • 資料としての保存性が高いため、一度作れば長期間にわたって安定的にダウンロードされ続けます。初心者の手元に置かれることで、ブランドの刷り込み効果も期待できます。

【実践】ホワイトペーパーの作り方 5ステップ

では、実際に制作を進める手順を5つのステップで解説します。 失敗しないための鉄則は、**「Step 1(企画)で種類とゴールを完全に決め切ること」**です。ここが曖昧なまま走り出すと、制作途中で方向性がブレてしまいます。

Step1:企画・戦略策定(リソースと種類の選定)

単に「ターゲット」を決めるだけではありません。「自社の手持ちリソース」と「狙い」を照らし合わせ、最適な「ホワイトペーパーの種類(型)」を決定します。

  • 1. 目的(狙い)の定義:
    • 潜在層に「新たな気づき」を与えたいのか? → 調査レポート、カオスマップ
    • 検討層に「成功のイメージ」を持たせたいのか? → 導入事例集
    • 実務層に「信頼とノウハウ」を売りたいのか? → 課題解決型(教科書)
  • 2. 社内リソースの棚卸し:
    • 「アンケート結果や独自データ」はあるか? → あれば調査レポート
    • 「良い顧客インタビュー」は取れそうか? → あれば事例集
    • 「ブログの人気記事」や「セミナー資料」はあるか? → あればノウハウ資料
  • 3. 種類の確定:
    • 上記の掛け合わせで、今回作るべき「型」を確定させます。

「何を作るか」がここで決まるため、後の工程で迷うことがなくなります。

Step2:構成案(骨子)の作成

企画で決まった「型」に合わせて、全体のストーリー(台割)を作ります。 いきなりスライドを作り始めるのではなく、Wordやテキストエディタで、各ページに何を載せるか設計します。

  • P1:表紙(ベネフィットが伝わるタイトル)
  • P2:導入(ターゲットの課題への共感)
  • P3:本題(企画で決めたデータやノウハウの提示)

この段階で、上司やチームと「この流れで説得力があるか?」を合意しておくと、手戻りを防げます。

Step3:原稿執筆(ライティング)

構成案に基づいて、各ページに入れるテキストや、グラフ・図解のラフ案を書きます。 ホワイトペーパーは「読む」というより「見る」媒体に近いため、文字量は詰め込みすぎないのがポイントです。

  • 目安: 1スライドあたり400文字以内
  • コツ: 箇条書きを多用し、パッと見て要点が伝わるようにする。

Step4:デザイン・レイアウト作成

ここで初めてPowerPoint(またはCanva、Figma等のデザインツール)を開きます。 トンマナ(トーン&マナー)を統一するためのマスタースライド設定や、フォント選定を行い、原稿をスライドに落とし込んでいきます。文字だけでは伝わりにくい部分は、図解やグラフにして視覚的に表現します。

Step5:校正・PDF化

完成したら、誤字脱字のチェックを行います。特に「数字」や「引用元データ」に間違いがないか入念に確認してください。 問題なければ、最後に必ず「PDF形式」で保存します。Web上で配布する際は、ファイルサイズが重すぎるとダウンロードに時間がかかるため、画像圧縮などで軽量化しておくのがマナーです。

【テンプレート】そのまま使える「基本構成」の型

「流れが決まらない」という方のために、最も汎用的でリード獲得に繋がりやすい**「課題解決型(ノウハウ提供型)」**の標準構成を紹介します。

この流れに沿って情報を埋めていけば、論理的で説得力のある資料が完成します。

1. 表紙(タイトル)

  • 役割: ダウンロードされるかどうかはここで9割決まります。
  • ポイント: 「誰の」「どんな悩みを」「どう解決するか」を一目で伝える。
    • × 「SEO対策について」
    • ○ 「広告費ゼロで月1万PVを集めるSEOチェックリスト」

2. はじめに(背景・共感)

  • 役割: 読者に「これは私のための資料だ」と思わせる。
  • 内容: 「最近、〇〇でお困りではありませんか?」とターゲットの悩みを代弁し、現状の課題を整理します。

3. 原因の分析(問題提起)

  • 役割: 解決策(ノウハウ)を聞く体制を整える。
  • 内容: なぜその課題が起きているのか? 表面的な事象ではなく、根本原因を指摘します。

4. 解決策の提示(ノウハウ・本編)

  • 役割: 読者に「有益な情報(Give)」を提供する。ここが資料の価値そのものです。
  • 内容: 具体的なメソッド、手順、チェックリストなどを惜しみなく公開します。ここで出し惜しみをしてはいけません。

5. 事例紹介(証拠)

  • 役割: 提示した解決策の信憑性を高める。
  • 内容: 「この方法を実践して成功した他社」の事例を数字付きで紹介します。

6. 自社ソリューション紹介(CTA)

  • 役割: ノウハウの実践を「効率化」する手段として自社商品を提案する。
  • 内容: 「この解決策は自力でもできますが、弊社ツールならもっと簡単です」と、自然な流れでサービス紹介へ繋げます。

7. 会社概要・お問い合わせ

  • 役割: 信頼性の担保と、ネクストアクションの提示。

脱・素人感!パワーポイントでのデザインのコツ

デザイナーでなくても、PowerPointの設定を少し意識するだけで、資料のクオリティは劇的に向上します。素人っぽさを消すための4つのルールを紹介します。

1. サイズは「16:9」か「A4横」が基本

印刷用なら「A4縦」ですが、Webで配布するホワイトペーパーはPCやスマホの画面で閲覧されます。モニターの比率に合わせて「16:9(ワイド画面)」または「A4横」で作成しましょう。横長の方が視線の移動が少なく、読みやすくなります。

2. 「余白(マージン)」を3割確保する

素人の資料は、情報を詰め込みすぎて余白がありません。 スライドの上下左右に十分な余白を取り、行間も広めに設定しましょう。「余白=情報の優先度」です。余白があるだけで、洗練された印象になります。

3. 「ジャンプ率」でメリハリをつける

ジャンプ率とは、一番大きな文字(見出し)と一番小さな文字(本文)のサイズ比率のことです。 見出しは思い切って大きく、本文は小さくすることで、パッと見ただけで情報の構造が伝わるようになります。

4. 配色は「メインカラー+1色」に絞る

色を使いすぎると、どこが重要なのかわからなくなります。 基本は「ブランドカラー(メイン)」1色と、強調したい部分に使う「アクセントカラー(赤やオレンジ)」1色に絞りましょう。それ以外はグレーや黒などの無彩色を使うのが鉄則です。

承知いたしました。 ブログ再利用のパートは「効率化の一手段」としてコンパクトにまとめ、本記事の重要テーマである**「作った後の展開(チャネルと戦略)」**を厚く解説します。


効率化テクニック:ブログ記事を「再利用」する

ゼロからホワイトペーパーを作るには、多大な工数がかかります。そこでおすすめなのが、既存のコンテンツを再利用(リサイクル)する方法です。

特に「ブログ記事のホワイトペーパー化」は非常に効率的です。 オウンドメディアでアクセスの多い「まとめ記事」や「連載記事」の内容を要約し、スライド形式に整えるだけで、立派なホワイトペーパーになります。すでに読まれている(ニーズがある)内容なのでダウンロードされやすく、構成や執筆のコストを8割近く削減できるというメリットがあります。

リサイクルの元となるブログ記事自体の質が低いと、ホワイトペーパーにしても成果は出ません。SEOで評価され、読者に信頼される記事の書き方はこちらを参考にしてください。

【活用・チャネル】リード獲得を加速する5つの「配布場所」

ホワイトペーパーは作って終わりではありません。ターゲットの目に触れる場所に設置して初めて、その効果を発揮します。 代表的な5つの配布チャネルと、それぞれの活用法を紹介します。

1. オウンドメディア(記事・サイドバー)

最も基本となるチャネルです。全ページ共通のサイドバーに設置するだけでなく、記事の内容(文脈)に合わせて設置するのがコツです。

  • 例:「SEO対策」の記事を読んだ人のために、「SEOチェックリスト」のDLボタンを記事の末尾に置く。

記事のどこに、どうやってホワイトペーパーを設置すればダウンロード数が増えるのか? 具体的な『導線設計』や『マイクロコピー』の技術については、以下の記事をご覧ください。

2. SNS(X / Facebook / LinkedIn)

ホワイトペーパーの一部(表紙や重要な図解)を画像として投稿し、「続きはプロフィールのリンクから」と誘導します。 特に「調査レポート」や「カオスマップ」などの独自性が高い資料は、SNSでの拡散性が高く、広告費をかけずに多くのリードを獲得できる可能性があります。

3. メルマガ・ナーチャリング

過去に名刺交換しただけの「休眠顧客」や、失注した顧客に対し、「お役立ち資料ができました」と配信します。 売り込み(セールス)の連絡ではないため開封率が高く、これをきっかけに再検討が始まるケースも少なくありません。

4. 広告のランディングページ(LP)素材

Facebook広告やLinkedIn広告の「リード獲得広告」のオファーとして使用します。 「無料相談」をオファーにするよりも、「資料ダウンロード」の方が心理的ハードルが低いため、顧客獲得単価(CPA)を安く抑えやすいのが特徴です。

5. 営業資料・展示会

オンラインだけでなく、オフラインでも活用できます。 展示会で名刺交換をする代わりに「QRコードで資料を持ち帰ってもらう」ことで、スムーズに情報を取得できます。また、インサイドセールスが電話をかける際に「先日公開した資料をお送りしたいのですが」と切り出すことで、受付突破率を高めることができます。

【戦略】成果を分ける「公開設定」の考え方(Gated vs Ungated)

配布チャネルが決まったら、最後に**「個人情報入力フォーム」を設置するかどうか**を決めます。ここは戦略の分かれ道です。

1. 基本の「フォーム通過型」

ダウンロード時に、会社名・氏名・メールアドレスなどの入力を必須にする形式です。

  • 目的: リード獲得(リスト作り)。
  • メリット: 営業リストが確実に増える。
  • デメリット: 入力の手間があるため、本当に欲しい人しかダウンロードしない(閲覧数が減る)。

2. あえて配る「全公開型」

入力フォームを設けず、クリックするだけで誰でもPDFが見れる(または記事として全公開する)形式です。

  • 目的: プレゼンス(存在感)向上・信頼獲得。
  • メリット:
    • 圧倒的に拡散され、多くの人の目に触れる。
    • 「有益な情報を隠さず出す会社」として、業界内での信頼(ブランド)が高まる。
    • PDFの中身もGoogleに評価されるため、SEO効果が期待できる。

★プロの戦略: 知名度がない初期フェーズや、自信作のレポートはあえて「全公開」し、市場の注目を集めるのが賢い戦略です。まずは全公開でファンを増やし、その後の「詳細なノウハウ」だけフォーム必須にするなど、使い分けましょう。

ホワイトペーパー制作は「内製」か「外注」か?

最後に、制作リソースの判断基準について解説します。

自社で作る場合(内製)

コストはかかりませんが、担当者の工数が大幅に圧迫されます。また、デザインスキルがない場合、どうしても「社内資料」のような見た目になってしまい、企業のブランドイメージを損なうリスクもあります。

プロに依頼する場合(外注)

制作会社や編集プロダクションに依頼する場合、費用相場は以下の通りです。

  • ライティング+デザイン:10万〜30万円 / 本
  • デザインのみ(原稿支給):5万〜15万円 / 本

コストはかかりますが、プロの編集者による「リード獲得に効く構成」と、デザイナーによる「信頼感のあるデザイン」が担保されます。

制作会社ごとの費用の違いや、見積もりの詳細な内訳については、以下の記事で解説しています。→[記事制作代行の料金相場を徹底解説]

よくある質問(FAQ)

Q:ホワイトペーパーの最適なページ数は? A:10〜20ページ程度が目安です。長すぎると読む気を失い、短すぎると満足度が下がります。

Q:制作ツールは何を使えばいい? A:基本的にはPowerPointで十分です。社内共有もしやすく、修正も簡単です。Googleスライドでも代用可能です。

Q:ダウンロード時の入力項目は何が良い? A:会社名、氏名、メールアドレスの3点が基本です。項目が多すぎると離脱率が上がるため、必要最低限に絞りましょう。

STSデジタルの制作支援

株式会社STSデジタルでは、Web制作会社としての「デザイン力」と、コンテンツ制作会社としての「編集力」を活かし、成果につながるホワイトペーパー制作を支援しています。

  • 戦略提案: 「リード獲得」狙いか、「プレゼンス向上」狙いかによって、最適な構成と配布戦略を提案。
  • 制作力: 読者を納得させるロジカルな構成と、ブランドを高めるデザイン。
  • 効率化: ブログ記事からのリサイクル制作や、既存資料のブラッシュアップにも対応。

「作りたいテーマはあるが、構成がまとまらない」「ブログ記事を資料化してリード獲得を増やしたい」という方は、ぜひ一度無料相談をご活用ください。

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