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SEOサイト構造設計の完全ガイド|5つの「軸」で決めるディレクトリ構成とURL設計

SEOサイト構造設計の完全ガイド 5つの「軸」で決めるディレクトリ構成とURL設計

SEO記事を書き始める前に、最も重要なのがサイトの「背骨」を決めることです。背骨が歪んでいると、Googleはサイトの専門性を正しく評価できず、読者も目的の記事に辿り着けません。

本記事では、ユーザーの検索意図を多角的に捉える「5つの戦略軸」をベースに、SEOパワーを最大化させるディレクトリ設計の手順を解説します。


目次

サイトの成否を分ける「5つの戦略軸」とは?

サイト構造(ディレクトリ設計)とは、いわば「情報の棚卸し」です。読者がどのような文脈で情報を探しているかに合わせて、以下の5つの切り口からメインとなる「軸」を選択します。

5つの戦略軸:比較一覧表

軸の種類ユーザーの検索意図(インテント)サイトの性格具体的なカテゴリー例
① サービス軸「良い製品を比較して選びたい」カタログ・百貨店型マットレス、枕、掛け布団
② 課題軸「今あるこの悩みを解決したい」お悩み相談所・病院型腰痛対策、不眠解消、冷え性
③ 成果軸「理想の自分・未来を手に入れたい」ジム・スクール型集中力向上、美肌睡眠、時短術
④ 属性軸「私と同じ境遇の人の正解を知りたい」セレクトショップ型一人暮らし、シニア、アスリート
⑤ シーン軸「あの場面で使えるものが欲しい」ライフスタイル提案型キャンプ、出張、ギフト、育児

なぜ「軸」の選択が重要なのか?

SEOにおける「専門性(Expertise)」の評価は、ディレクトリ(URLの階層)にどのようなキーワードが並んでいるかに強く影響されます。

  • Googleへの影響: 論理的に整理された階層構造により、クローラーがサイトのテーマを正しく理解し、サイト全体の評価(ドメインパワー)が特定のトピックへ集中しやすくなります。
  • 読者(UX)への影響: 自分の心理状況(「腰が痛い」のか「キャンプで使いたい」のか)に合致したナビゲーションがあることで、離脱率が下がり、コンバージョン(成約)への導線がスムーズになります。

ポイント:

全ての軸を「カテゴリー」に詰め込むのはNGです。サイトのメインテーマに合わせ、「どの軸をディレクトリ(URL)の柱にするか」を一つ決めることが、設計の第一歩となります。

どの軸を選ぶべきか?判断基準と戦略的ロジック

SEOサイト構造設計のプロセスを示すイラスト。上部に「サービス軸」「課題軸」「成果軸」「属性軸」「シーン軸」の5つのブロックがあり、それらが3層のフィルター(漏斗)を通過していく。「ビジネスゴール」「ターゲットの認知段階」「検索ボリュームと競合性」という3つの基準で絞り込まれた結果、1つの最適な「背骨(ディレクトリ)」が選ばれ、強固なサイト構造が完成する様子が描かれている。

5つの軸のうち、どれを「サイトの背骨(ディレクトリ)」に据えるべきかは、単なる好みではなく、「ビジネスゴール」と「ターゲットの認知段階」「検索ボリュームと競合性」によって論理的に決定します。

適切な軸を選ぶための3つの判断基準を解説します。


① ターゲットの「認知段階(フェーズ)」で選ぶ

読者が現在、自分の悩みをどの程度自覚し、解決策を求めているかによって最適な軸が変わります。

  • 潜在層(悩みは漠然としている):【成果軸】【課題軸】「もっと仕事で評価されたい(成果)」「最近よく眠れない(課題)」といった、解決策(製品)を知らない層には、彼らの心理状態に寄り添う軸が有効です。
  • 比較検討層(解決策を探している):【サービス軸】【属性軸】【シーン軸】「自分に合うマットレスが欲しい(サービス)」「腰痛持ちの自分(属性)が、キャンプ(シーン)で使えるものが知りたい」など、目的が具体的な層には、条件で絞り込める軸が刺さります。

② ビジネスの「コンバージョン(CV)地点」で選ぶ

最終的にユーザーにどのような行動をとってほしいか(購入、資料請求、来店など)から逆算します。

  • 直接購入(ECなど):【サービス軸】が基本製品スペックが購入の決め手になるため、製品カテゴリを主軸にします。
  • リード獲得(相談・契約):【課題軸】【成果軸】が強力「信頼」が成約の鍵となるため、専門家として悩みを解決したり未来を提示したりする構造が信頼を生みます。
  • ニッチな差別化:【属性軸】【シーン軸】で勝負競合が強い市場では、「〇〇専用(属性)」や「〇〇での利用(シーン)」に絞った構造にすることで、特定のセグメントで圧倒的なシェア(1位)を狙うロジックです。

③ 検索ボリュームと競合性(SEO戦略)

  • 王道のキーワードで戦うなら:【サービス軸】【課題軸】検索ボリュームは大きいですが、大手メディアやメーカー公式サイトが競合となります。
  • スモールワード・ロングテールで勝つなら:【属性軸】【シーン軸】「一人暮らし マットレス 選び方」のように、属性やシーンが加わることで検索意図が明確になり、競合が少ないため早期に上位表示を狙えます。

戦略決定のロジック・マトリクス

迷ったときは、以下の表を参考に「自社がどこで勝つか」を定義してください。

選択する軸狙うSEO効果向いているビジネスロジック(なぜ選ぶか)
サービス軸カテゴリの権威性物販、製造業専門メーカーとしての「網羅性」を示すため
課題軸信頼と専門性の構築士業、コンサル、医療「解決力」を提示し、指名検索に繋げるため
成果軸ブランディング・ファン化美容、スクール、コーチング「憧れ・理想」を演出し、情緒的価値を作るため
属性軸高いCVR(成約率)特定層向けサービス「自分専用」という納得感で即決させるため
シーン軸独自の市場ポジションレジャー、ギフト、BtoB特定の「利用機会」を独占し、第一想起を狙うため

【テンプレート】5つの軸別・ディレクトリ構成の実例

選択した軸に応じて、Googleのクローラーに「何についての専門サイトか」を伝える最適なURL構造を設定しましょう。

① サービス軸(製品カテゴリー優先型)

製品ラインナップを整理し、スペックや特徴で比較させる構造です。

  • URL構造の例: domain.com/products/[製品カテゴリ]/[個別記事]
  • 具体例: .../products/mattress/high-rebound-comparison
  • メリット: 「商材名 + 比較・おすすめ」といった、購買意欲の高いキーワードで上位を狙いやすい。
  • デメリット: 競合他社(メーカーや大手EC)と真っ向勝負になり、ドメインパワーの差が出やすい。

② 課題軸(お悩み解決優先型)

ユーザーの痛み(不調・不満)を起点に、解決策を提示する構造です。

  • URL構造の例: domain.com/column/[部位・症状]/[個別記事]
  • 具体例: .../column/back-pain/stretching-methods
  • メリット: ユーザーの信頼(E-E-A-T)を獲得しやすく、長期間安定したアクセスが見込める。
  • デメリット: 「情報の提供」で満足してしまい、製品購入(CV)への導線設計に工夫が必要。

③ 成果軸(ベネフィット追求型)

製品を手に入れた後の「理想の未来」をカテゴリーにする新しい構造です。

  • URL構造の例: domain.com/lifestyle/[理想の成果]/[個別記事]
  • 具体例: .../lifestyle/concentration-up/morning-habits
  • メリット: ブランディングに強く、情緒的な価値(ファン化)を重視する高単価商材と相性が良い。
  • デメリット: 検索ボリュームが少ないキーワードも多いため、キーワード選定のセンスが問われる。

④ 属性軸(ターゲット・ペルソナ優先型)

「誰のための情報か」をディレクトリ名に含める構造です。

  • URL構造の例: domain.com/target/[属性]/[個別記事]
  • 具体例: .../target/solo-living/bed-selection
  • メリット: 「自分向けだ」と直感させることでCTR(クリック率)とCVR(成約率)が劇的に向上する。
  • デメリット: ターゲットを絞りすぎるため、サイト全体の流入数(母数)が限定的になりやすい。

⑤ シーン軸(シチュエーション特化型)

「いつ、どこで使うか」という状況を入り口にする構造です。

  • URL構造の例: domain.com/scenes/[利用シーン]/[個別記事]
  • 具体例: .../scenes/camping/cold-protection
  • メリット: 特定の利用シーンを独占することで、ニッチな市場で「No.1」のポジションを築きやすい。
  • デメリット: 季節性(キャンプ、ギフトなど)の影響を強く受け、アクセスに波が出やすい。

実装時の注意点:ディレクトリの深さ

どの軸を選んでも共通するSEOの黄金ルールは、「重要なページはトップページから2クリック以内(3階層目まで)に配置する」ことです。

NG例: domain.com/a/b/c/d/article(階層が深すぎてクローラーが辿り着きにくい) OK例: domain.com/category/article(シンプルで専門性が伝わりやすい)

カテゴリーとタグの「使い分け」黄金ルール

カテゴリーとタグの「使い分け」黄金ルールを可視化した図解。垂直な軸として描かれた「カテゴリー」は情報の住所(階層構造)を意味し、サイトの専門性をGoogleに伝える役割を果たす。一方で、水平に横断する「タグ」は情報のラベルとして機能し、ユーザーが属性やシーンで記事を絞り込むためのUXを向上させる役割を担う。垂直な背骨(カテゴリー)と、それを横串でつなぐタグの関係性が示されている。

サイト構造を複雑にせず、かつ多角的な入り口を作るためには、「情報の縦糸(カテゴリー)」と「情報の横糸(タグ)」を明確に区別して設計します。

カテゴリーとタグの役割比較

項目カテゴリー(縦の階層:ディレクトリ)タグ(斜めの横断:フィルタ)
主な対象Google(検索エンジン)ユーザー(読者)
SEOの役割サイトの「専門性(トピック)」を伝える。関連記事を繋ぎ、サイト内回遊を促す。
URLへの影響.../category/article のようにURLに含まれる。通常、URLの階層構造には影響しない。
運用のルール1記事につき原則1つ。1記事に複数設定してOK。

実装のロジック:1軸固定+多軸補完

5つの軸すべてをカテゴリーにすると、パンくずリストが重複したり、Googleが「どの階層が正解か」を判断できなくなったりします。そのため、以下のルールで設計します。

  1. カテゴリー(ディレクトリ)にする軸を1つ選ぶ(例:最も検索ボリュームがあり、専門性を打ち出しやすい「課題軸」を選択)
  2. その他の軸は「タグ」として活用する(例:「属性」や「シーン」はタグにして、ユーザーが自分の状況で絞り込めるようにする)

具体例:マットレス販売サイトの場合

  • メインの背骨(カテゴリー):課題軸
    • /back-pain/(腰痛対策)
    • /insomnia/(不眠解消)
  • 横串のフィルタ(タグ):属性軸・シーン軸
    • #一人暮らし向け(属性)
    • #キャンプ用(シーン)
    • #ギフトにおすすめ(シーン)

こうすることで、URL構造はシンプルに保ちつつ、ユーザーには「一人暮らしで腰痛に悩んでいる人向け」といった、複数の軸が掛け合わさった最適なページを提供できるようになります。


陥りがちなNG例:カテゴリーの乱立

「腰痛対策」と「一人暮らし向け」の両方をカテゴリー(ディレクトリ)にしてしまうと、1つの記事をどっちのフォルダに入れるべきか迷い、結果として同じ内容の記事が複数のURLで存在してしまう「重複コンテンツ」のリスクが高まります。

実践】サイト構造を視覚化する4ステップ

いきなりCMS(WordPressなど)でカテゴリーを作るのではなく、まずはツールを使って全体像を可視化します。これにより、サイト全体の「専門性の深さ」と「情報の網羅性」を一目で把握できるようになります。

ステップ1:中心となる「ピラー(軸)」を置く

マインドマップの中央に、サイトのメインテーマ(例:マットレスの選び方)を置きます。ここがサイトの「ホーム(トップページ)」になります。

ステップ2:メインディレクトリ(第2階層)を伸ばす

第2セクションで決定した**「メインの軸」**に基づいて、大カテゴリーを枝として伸ばします。

  • 課題軸の場合: 「腰痛対策」「不眠解消」「肩こり改善」など
  • サービス軸の場合: 「高反発マットレス」「低反発マットレス」「三つ折りタイプ」など

ステップ3:個別記事(クラスターページ)を配置する

各カテゴリーに紐づく具体的な記事(キーワード)を配置します。

  • この際、各記事からカテゴリー(ピラー)へ、そして関連記事同士がどうリンクし合うかの**「内部リンクの導線」**を意識して線を引きます。これを「トピッククラスター構造」と呼びます。

ステップ4:タグ(サブの軸)を付箋で追加する

メインディレクトリには含まれないが、ユーザーにとって重要な「属性(一人暮らし向け等)」や「シーン(キャンプ等)」を、各記事の横にメモやタグとして書き込みます。


【まとめ】情報の「置き場所」がSEOの資産価値を決める

強固なサイト構造は、一度構築してしまえば、新しい記事を追加するたびにサイト全体の評価(ドメインパワー)を押し上げてくれる「資産」となります。

  • 5つの軸から、自社の強みとターゲットに最適な「背骨」を選ぶ。
  • ディレクトリ構造を論理的に整理し、Googleに専門性を伝える。
  • カテゴリーとタグを使い分け、ユーザーに多角的な入り口を提供する。
  • マインドマップで視覚化し、情報の重複や孤立を防ぐ。

情報の「置き場所」に迷いがなくなれば、あとはその設計図に沿って高品質な記事を積み上げていくだけです。


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