「採用サイトに社員紹介を載せているが、応募が増えない」「インタビュー記事の内容がマンネリ化して、誰に向けたものか分からない」多くの採用担当者様から、こうしたご相談をいただきます。
求職者の売り手市場が続く中、ただ「社員の声」を掲載するだけでは、優秀な人材の心は動きません。重要なのは、「誰に(ターゲット)」「何を(テーマ)」「どう届けるか(活用)」を戦略的に設計することです。
本記事では、採用広報における社員インタビュー記事の本来の効果から、ターゲット別の具体的な質問例、そして作った記事を無駄にしないための活用チャネルまでを徹底解説します。
なぜ必要? 「採用」における「社員インタビュー」記事の3つの効果
募集要項(求人票)だけでは伝えきれない情報を補完し、採用成果に直結させるのがインタビュー記事の役割です。主な効果は以下の3点です。
1. ミスマッチの防止
現場のリアルな声(時には苦労や厳しさ含む)を事前に伝えることで、求職者が入社後の働き方を具体的にイメージできるようになります。「思っていたのと違った」という入社後のギャップを減らし、早期離職を防ぐ効果があります。
2. 志望度の向上(動機付け)
給与や勤務地といった「条件面」での差別化が難しい場合、「誰と働くか」「どんなキャリアが描けるか」というストーリーが他社との差別化要因になります。ロールモデルとなる社員の記事は、求職者の「この会社で働きたい」という意欲を強力に後押しします。
3. 潜在層へのアプローチ(認知拡大)
「今すぐ転職したいわけではない」という潜在層に対しても、仕事への情熱やユニークな社内制度などの読み物コンテンツはSNS等で届きやすく、認知のきっかけを作ることができます。
ターゲットを逃さない! 採用インタビュー記事の「企画・設計」
効果の出ない記事の共通点は、「ターゲットが曖昧」であることです。取材を行う前に、必ず以下の2点を設計しましょう。
「誰に」届けるかを決める(ターゲット設定)
「優秀な人なら誰でも」というスタンスでは、記事のメッセージが薄まります。
「大手企業で歯車のように働くことに疲れた第二新卒の営業職」や「技術力を正当に評価されたいエンジニア」など、具体的なペルソナ(人物像)を設定しましょう。それによって、聞くべき話が変わってきます。
「どのフェーズ」で読ませるか(情報設計)
求職者の検討度合いに合わせて、記事の役割を分けることも重要です。
- 認知・興味フェーズ(知ってもらう)
- 創業ストーリー、ビジョンインタビューなど、「ワクワク感」や「共感」を重視した内容。
- 検討・比較フェーズ(自分事化してもらう)
- 1日のスケジュール、具体的なプロジェクト事例など、「自分が働く姿」をイメージさせる内容。
- 応募・決断フェーズ(背中を押す)
- 評価制度の運用実態、福利厚生、活躍者の共通点など、「入社の決め手」や「安心感」になる内容。
【一覧表】採用インタビューの「対象者選定」と6大テーマ別「質問例」
ターゲットとフェーズが決まったら、実際に「誰に」「何を聞くか」を決定します。
以下に、採用で訴求すべき主要な6つのテーマと、それぞれのターゲット選定基準、本音を引き出す質問例をまとめました。この表を参考に、自社の課題に合わせたインタビューを企画してください。
| テーマ | 対象者(選定基準) | 訴求ポイント(狙い) | 本音を引き出すキラークエスチョン(質問例) |
| 1. ライフワークバランス | ・子育て中の社員 ・趣味と両立している社員 | 「激務ではないか?」という不安を払拭。 楽さではなく「メリハリ」を強調する。 | ・「ぶっちゃけ、残業の実態はどうですか?」 ・「有給は取りやすい雰囲気ですか? 具体的な休日の過ごし方は?」 ・「仕事外の活動が、業務に活きたエピソードはありますか?」 |
| 2. 若手の活躍・成長 | ・新卒/第二新卒入社 1〜3年目 ・早期抜擢された若手 | 裁量権の大きさ、成長スピード。 「失敗してもフォローがある」心理的安全性。 | ・「入社1年目で『ここまで任されるの?』と驚いた仕事は?」 ・「一番大きな失敗経験と、その時上司や先輩はどう反応したかを教えてください。」 ・「入社前と後で、会社の印象はどう変わりましたか?」 |
| 3. 仕事の内容・やりがい | ・現場のエース社員 ・職種別(営業/開発など) | 業務の解像度を上げ、リアリティを持たせる。 抽象論ではなく具体的なタスクレベルで。 | ・「出社してから退社するまでの、リアルな1日のスケジュールを教えてください。」 ・「今、一番脳汁が出る(興奮する)瞬間はどんな時ですか?」 ・「現在抱えている一番ヘビーな課題は何ですか?」 |
| 4. キャリアステップ | ・中堅〜ベテラン社員 ・異動経験者/マネージャー | 「この会社でどうなれるか」の中長期ビジョン。 会社が個人のキャリアにどう向き合うか。 | ・「入社時と現在で、ご自身のスキルはどう変化しましたか?」 ・「会社はあなたの『やりたいこと』に対して、どう耳を傾けてくれますか?」 ・「今後、社内で狙っているポジションや役割はありますか?」 |
| 5. 社内制度・福利厚生 | ・制度を実際に利用した社員 ・地方勤務/リモート社員 | 制度が形骸化しておらず、活用されている証明。 働きやすさの裏付け。 | ・「一番利用している、あるいは『あって良かった』と思う社内制度は何ですか?」 ・「『この会社らしいな』と感じる社内の雰囲気や独自のカルチャーは?」 ・「リモートワークでのコミュニケーションで工夫していることは?」 |
| 6. 女性の活躍 | ・産休育休からの復帰者 ・女性管理職 | 長く働ける環境・ロールモデルの提示。 ライフステージ変化への柔軟性。 | ・「産休・育休から復帰する際、不安はありましたか? 周囲のサポートはどうでしたか?」 ・「ライフステージが変わっても、プロとして働き続けられる理由は何だと思いますか?」 ・「女性管理職として感じる、この会社の面白さと難しさは?」 |
失敗しないために! 採用インタビュー記事制作の「ポイントと注意点」
良い素材(インタビュー内容)が集まっても、記事の仕上げ方次第で読まれないものになってしまいます。制作時は以下のポイントに注意しましょう。
1. 綺麗事だけで終わらせない(リアリティの確保)
「風通しが良いです」「やりがいがあります」といった美辞麗句だけの記事は、今の求職者には「広告」に見えてしまい、逆に信頼を損ないます。
「プロジェクトが炎上した時の話」や「現在チームとして不足しているスキル」など、あえてネガティブな要素や課題も含めて語ることで、記事の信憑性が格段に上がります。
2. 「話し言葉」を整えすぎない(臨場感の演出)
読みやすさを重視するあまり、すべてを「です・ます」調の整然とした文章にしてしまうと、その人の「人柄」や「熱量」が消えてしまいます。
「〜なんですよね(笑)」「正直、最初はキツかったです」といった、本人の口調やニュアンスをあえて残す編集を行うことで、読者は親近感を抱きます。
3. 写真・ビジュアルにこだわる
記事をクリックするかどうか、最後まで読むかどうかは、ファーストビューの写真で決まると言っても過言ではありません。
会議室で撮った証明写真のような画像ではなく、実際に働いている様子のスナップや、自然光の中で見せるふとした笑顔など、プロのカメラマンによる質の高い写真を使用することを強く推奨します。
とはいえ、プロに取材や撮影を依頼する場合の予算感は気になるところです。インタビュー記事制作を外注する場合の費用相場や、見積もりの内訳については、以下の記事で詳しく解説しています。
▶あわせて読みたい:社員インタビュー記事作成の料金相場は?見積もり項目や費用を抑えるコツ
作ってからが本番! チャネル別・採用インタビュー記事の「活用方法」
採用インタビュー記事は「作って終わり」ではありません。ターゲットの目に触れる場所に、積極的に届けていく必要があります。
1. 採用サイト・オウンドメディア(ストック活用)
まずは自社サイトに掲載し、検索流入の受け皿にします。この際、記事の最後に「同じ職種の社員インタビューはこちら」といった内部リンクを設置し、サイト内を回遊させることで、企業への理解度と志望度を高めます。
採用におけるオウンドメディア(リクルートメディア)の立ち上げ方や、運用のポイントについては、こちら記事も参考にしてください。

2. スカウトメール・ダイレクトリクルーティング(攻めの活用)
スカウトメールを送る際、テンプレート文だけでは返信率は上がりません。
候補者の経歴を見て、「〇〇さんと似たキャリアを持つ社員の記事です」とURLを添えてみてください。「自分のことを理解してくれている」という印象を与え、返信率向上につながります。
3. SNS・採用ピッチ資料(拡散・プレゼン活用)
X(旧Twitter)やLinkedInなどのSNSでは、記事全文ではなく「社員の名言(パワーワード)」を画像化して投稿し、記事への流入を促します。
また、会社説明会の資料(採用ピッチ資料)の中に、社員の生の声として記事の抜粋やQRコードを掲載することで、プレゼンテーションの説得力を補強できます。
まとめ
採用インタビュー記事は、単なる社員紹介ではなく、求職者の不安を解消し、入社の背中を押すための強力なツールです。
- ターゲットとフェーズを明確にする
- 6つのテーマを使い分け、多角的に自社の魅力を伝える
- 作った記事をスカウトやSNSで積極的に活用する
これらを意識して、自社の「採用力」を底上げするコンテンツを制作していきましょう。
「自社のリソースだけでこれら全てを行うのは難しい」と感じた場合は、制作会社への依頼も検討してみてください。まずは一般的な費用感を知ることから始めましょう。
