「オウンドメディアを始めたいが、何から手をつければいいかわからない」 「とりあえずブログ機能を実装しようとしているが、これでいいのか不安だ」
多くの企業が直面するこの悩み。実は、立ち上げで失敗する原因のほとんどは、「手段(メディアを作ること)」が目的化してしまい、上位概念である「事業戦略」と乖離してしまうことにあります。
この記事では、単なるサイト構築の手順書ではなく、経営・事業戦略という「憲法」に基づき、失敗しないオウンドメディアを構築するための全ロードマップを解説します。
そもそも、なぜ多くのオウンドメディアが1年以内に更新停止に追い込まれるのでしょうか? 立ち上げ前に知っておくべき『典型的な失敗パターン』については、以下の記事で詳しく解説しています。
【Phase0:前提】オウンドメディア立ち上げ前の「役割定義」チェック
具体的な手順に入る前に、一つだけ確認させてください。 オウンドメディアは、それ単体で存在するものではありません。以下の図のように、上位の戦略に従属する「戦術の一つ」です。

この「憲法(全体戦略)」における立ち位置が曖昧なまま、現場判断でスタートすると、必ず途中で方向性を見失います。まずは以下の2点を経営層と現場で握れているか確認してください。
1. 「生み出す領域」と「まとめる領域」の区別
プロジェクトが失敗する最大の原因は、経営層と現場の「役割」が混同してしまうことにあります。ここは非常に重要なので、詳しく解説します。
オウンドメディア構築には、大きく分けて2つの責任領域があります。
① 経営層の責任:価値を「生み出す」領域(Why / What)
ここは、現場の担当者では決められない**「投資の意思決定」**の領域です。 経営陣は、「流行っているから」といった曖昧な理由ではなく、ビジネスとして以下の問いに答えを出す必要があります。
- 目的(KGI): 「売上を◯%上げるため」「採用コストを◯万円下げるため」など、数字で言えるゴールは何か?
- 投資判断: そのゴールのために、いつまでに、いくら(予算・人)を投じる覚悟があるか?
ここが定まっていない状態で「とりあえずいい感じのメディアを作って」と現場に丸投げするのは、**「行き先を告げずにタクシーに乗る」**のと同じで、迷走の始まりです。
② 現場の責任:形に「まとめる」領域(How)
経営層から降りてきた「目的(ゴール)」を達成するために、具体的な**「手段」**を考えるのが現場の仕事です。
- 戦術策定: ゴール達成には「SEO記事」がいいのか、「インタビュー」がいいのか?
- 要件定義: どんなデザイン、どんなシステムなら実現できるか?
よくある失敗パターン
失敗するのは、この境界線が曖昧な時です。
- × 経営層が「手段」に口を出す:
- 「デザインは赤がいい」「あの会社の真似をして」など、目的ではなく好みを押し付けると、現場は思考停止します。
- × 現場が「目的」から考えさせられる:
- 「何のためにやるの?」から現場に考えさせると、視座が低くなり、単なる「ブログ更新」が目的化してしまいます。
成功への第一歩は、経営層が「目的地(KGI)」を明確に指し示し、現場がそのための「地図(戦術)」を描くという役割分担を徹底することです。、次の「Phase1:戦略策定」へ進んでください。まだ曖昧な場合は、一度立ち止まって社内合意をとることを強く推奨します。
【Phase1:戦略】ターゲット定義と「行動変容」の設計
経営層から「目的(KGI)」を受け取ったら、次はそれを実現するための具体的な戦略を練ります。 ここでやるべきことは、「誰に(Target)」対して、「どうなってほしいか(Goal)」を定義する作業です。
3. 「実在する悩み」からターゲットを特定する
「30代男性・会社員」といった属性データ(デモグラフィック)だけでは不十分です。オウンドメディアにおいては、「どんな『負』を抱えている人か」という心理状況(サイコグラフィック)まで解像度を高める必要があります。
- NG例(属性): 都内の中小企業に勤める人事担当者。
- OK例(課題): 採用難で現場から急かされているが、エージェント費用が高騰しており、低コストな母集団形成の手法を探している人事担当者。
「自社の商品があれば救える人」は具体的にどんな状況にいるのか? 営業担当者にヒアリングするなどして、ターゲット像を固めましょう。
4. 記事を読んだ後の「行動変容」を設計する
ペルソナシートやカスタマージャーニーマップを作る際、綺麗にまとめることが目的になってはいけません。 この工程のゴールは、「読者の『Before』と『After』を定義すること」です。

- Before(記事を読む前):
- 「採用コストを下げたいが、方法がわからない」と悩んでいる。
- 「オウンドメディアなんて手間がかかるだけだ」と誤解している。
- After(記事を読んだ後):
- 「自社にはリファラル採用が合っているかも」と気づく。
- 「オウンドメディアは資産になるなら、検討してみよう」と前向きになる。
この「気持ちの変化(態度変容)」を起こすために記事を書くのだ、という設計図を作ることが、Phase1の具体的なタスクです。
【Phase2:中身】役割に応じた「記事の型」を選ぶ
ターゲットとゴールが決まったら、それを実現するために「どんな記事を書くか(コンテンツタイプ)」を決めます。 オウンドメディアの記事には、大きく分けて2つの「型」があります。Phase0で決めたメディアの役割に合わせて選びましょう。
5. 自社に必要なのはどっち? 2つの「記事タイプ」
あれもこれもと欲張ると、メディアの色がボヤけます。まずはメインとなる型を決めましょう。
タイプA:検索型(SEOコンテンツ)
「悩み解決」に特化した記事です。
- 目的: 新規リード獲得、アクセス増(攻め)。
- 特徴: ユーザーがGoogle検索する「キーワード(悩み)」に対して、正解を提示する。
- 書き方: 網羅性と論理性が重要。「検索意図」を満たすことが全て。
- 向いている企業: 知名度はまだ低いが、技術やノウハウを持っている企業。
タイプB:情緒型(ブランドコンテンツ)
「共感・信頼」に特化した記事です。
- 目的: ファン化、採用、指名検索の増加(守り)。
- 特徴: 検索数は追わず、自社の「想い」や「人」にフォーカスする。
- 書き方: ストーリー性が重要。社員インタビュー、開発秘話、社長コラムなど。
- 向いている企業: 採用を強化したい企業や、すでに一定の知名度がある企業。
6. カテゴリ(サイト構造)の設計
選んだ「型」によって、サイトのメニュー(カテゴリ)構造も変わります。
- 検索型なら: 「SEOノウハウ」「マーケティング用語集」など、ユーザーの悩み別に分類する。
- 情緒型なら: 「私たちの想い」「プロジェクトストーリー」「社員紹介」など、自社の資産別に分類する。
【Phase3:構築】運用体制とセットで考えるシステム設計
中身(コンテンツ)の方向性が決まって初めて、箱(システム)の選定に入ります。 ここで重要なのは、「運用体制」と「システム」を行ったり来たりして考えることです。
7. システム選定は「人」で決まる
「WordPressが有名だから」と安易に選ぶのは危険です。以下の問いに答えてみてください。
- 誰が更新しますか?
- エンジニアがいない広報担当だけなら、WordPressすら重荷かもしれません(noteやはてなブログなどのSaaS型が正解かも)。
- セキュリティ要件は?
- 金融・医療系なら、オープンソースのCMSはNGが出るかもしれません(フルスクラッチや静的サイトが正解かも)。
「作りたい機能」と「回せる体制」のバランスを見て、最適なシステムを選定しましょう。
8. UI/UXデザインとCV導線の設計
デザインの正解も、目的によって異なります。
- リード獲得なら
- 記事の途中や末尾に、自然な形で「資料請求フォーム」への導線があるか。
- スマホで見た時に「問い合わせボタン」が押しやすい位置にあるか。
- ブランディングなら
- 没入感を高めるために、あえて広告的なバナーを排除する。
- 写真やフォントの美しさにこだわる。
オウンドメディア立ち上げの費用感と期間
「上流(戦略)」から入るか、「制作(構築)」だけかによって、費用と期間は大きく異なります。
構築期間の目安
- 制作のみ: 2〜3ヶ月
- 戦略策定含む: 4〜6ヶ月以上
- ※全体の事業戦略とのすり合わせ(Phase0)に時間がかかるケースが多いです。
【推奨】オウンドメディア立ち上げの標準スケジュール(計6ヶ月モデル)

費用の考え方(ROI)
構築費(イニシャルコスト)だけで判断せず、運用費(ランニングコスト)を含めた投資対効果で考えましょう。
- ミニマム(〜100万円): テンプレート利用、記事は自社制作。
- スタンダード(300〜500万円): オリジナルデザイン、戦略設計、初期記事制作込み。
- フルパッケージ(1,000万円〜): 全社的なブランディング支援、取材撮影、システム開発。
失敗しないパートナー選定の基準
オウンドメディアの立ち上げを外注する場合、最も重要なのは「戦略」と「実装」の分断を防ぐことです。
- 戦略コンサルだけ入れると…
- 立派な戦略書はできるが、現場が動けない(記事が作れない)。
- 制作会社だけ入れると…
- 箱はできるが、中身がない(目的がブレる)。
成功の鍵は、「上流(事業理解)」から「下流(Web・記事制作)」まで一気通貫で理解しているパートナーを選ぶことです。
STSデジタルの立ち上げ支援
株式会社STSデジタルは、単なるWeb制作会社でも、記事制作代行会社でもありません。 事業戦略に基づいた「目的の定義」から入り、最適なシステム構築とコンテンツ制作をワンストップで支援するパートナーです。
- ビジネス理解: 親会社(システムサポート)のノウハウを活かし、KGI/KPI設計から参画します。
- Web×コンテンツ: 「SEOに強いサイト」と「読まれる記事」の両方を、一貫した戦略の下で制作します。
「事業戦略を実現するためのオウンドメディアを作りたい」 「何から手をつければいいか、壁打ち相手が欲しい」
そんな方は、ぜひ一度無料相談をご活用ください。貴社の事業フェーズに合わせた、最適な立ち上げロードマップをご提案します。



