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オウンドメディアの「失敗学」|現場が疲弊する6つの典型パターンと再生への処方箋

オウンドメディアの「失敗学」 現場が疲弊する6つの典型パターンと再生への処方箋

「オウンドメディアはオワコンだ」「成果が出る前に更新が止まってしまった」

Webマーケティングの世界では、こうした嘆きが後を絶ちません。実際、新たに立ち上がったメディアの多くが、1年以内に更新を停止しているというデータもあります。

しかし、失敗の原因を「運が悪かった」「ライターがいなかった」で片付けてはいけません。失敗するプロジェクトには、業界や規模を問わず驚くほど共通した「構造的な欠陥」が存在します。

この記事では、多くの企業が陥る6つの失敗パターンを「症例」として解説します。自社のプロジェクトがどのパターンに当てはまっているか、診断するつもりで読み進めてください。

そもそも、オウンドメディアとは『広告』とどう違うのか? なぜこれほど時間がかかる施策なのか? その本質的な『役割』と『定義』を再確認したい方は、まず以下の記事をご覧ください。

目次

【自己診断】あなたのメディアはどこで詰まっている?

失敗の原因を探る前に、まずは自社のメディアが「どのフェーズで躓いているか(症状)」を特定しましょう。オウンドメディアの失敗は、大きく分けて以下の3つの症状に分類されます。

症状(悩み)原因の所在該当する失敗パターン
1. 記事が読まれない
(アクセスが集まらない)
戦略・企画
ユーザーの検索意図(インテント)と、提供している記事の中身がズレている。
パターン1:戦略不一致型
(ブランドのエゴ)
パターン4:独りよがり型
(プロダクトアウト)
2. 読まれているが成果が出ない
(CVしない、売上にならない)
導線・仕組み
集客はできているが、そこから「行動」させるための設計や機能が欠落している。
パターン2:短期短気型
(KPI設定ミス)
パターン6:片手落ち型
(Webと記事の分断)
3. 本数・質が担保できない
(更新が止まる、中身が薄い)
体制・リソース
制作を続けるための「体力」や、承認を通すための「フロー」に欠陥がある。
パターン3:大企業病型
(承認フローの弊害)
パターン5:リソース破綻型
(片手間運用)

次章から、これらの症状を引き起こす「6つの病巣」について詳しく解説します。


【戦略フェーズの失敗】最初のボタンの掛け違い

最初の設計図が間違っていれば、どれだけ良い記事を書いてもゴールにはたどり着けません。

パターン1:戦略不一致型(ブランドのエゴ vs 検索意図)

大手企業や、ブランドへのこだわりが強い企業で頻発する「ないものねだり」のケースです。

  • 症状:
    • 経営層は「圧倒的なアクセス数(SEO成果)」を求めている。
    • しかし現場では「他社比較記事は品がない」「『〜とは』のような初心者向け記事はブランドに合わない」と、SEOに必要な戦術を禁止される。
  • なぜ失敗するのか:
    • 「ユーザーが知りたいこと(検索意図)」と「企業が言いたいこと」が喧嘩しているからです。
    • ユーザーの悩み(比較や基礎知識)を無視すれば、当然Googleには評価されず、上位表示も流入も取れません。手足を縛られた状態で「マラソンで勝て」と言われているのと同じです。
  • 【処方箋】役割の再定義
    • 「SEO(集客)」を狙うなら、泥臭いニーズに応える覚悟を持つ。
    • 「ブランド」を守るなら、数(PV)を捨てて「指名検索(質)」や「SNS拡散」に特化する。
    • どっちつかずの中途半端が、一番の失敗要因です。

事業戦略に基づいた正しい目的定義や、ターゲット設定のやり直しについては、以下の記事でロードマップとして解説しています。

パターン2:短期短気型(農耕放棄)

メディアの特性を理解していない経営層による、「時期尚早な撤退」です。

  • 症状:
    • 立ち上げから3ヶ月〜半年で「全然売上になっていないじゃないか」と詰められる。
    • 広告(即効性)と同じ感覚でROIを求められ、予算がカットされる。
  • なぜ失敗するのか:
    • オウンドメディアは「農耕(資産積み上げ型)」であり、種を撒いてから実るまでに最低でも半年〜1年はかかるからです。芽が出る前に畑を掘り返してしまうようなものです。
  • 【処方箋】フェーズ別KPIの合意
    • 「最初の半年は売上ゼロでも、記事数と順位がついていれば順調」という評価軸を、最初に経営層と握っておく必要があります。

フェーズごとに見るべき数字(KPI)は変わります。正しい目標設定と、運用フェーズごとの評価基準についてはこちらをご覧ください。


【制作フェーズの失敗】質の低下と疲弊

いざ運用が始まってからの、体制やコンテンツ品質に関する失敗です。

パターン3:大企業病型(承認フローで牙を抜かれる)

多くの関係者が関与しすぎることで、コンテンツが死んでいくケースです。

  • 症状:
    • 企画段階では尖った良いアイデアが出る。
    • しかし、法務・広報・各事業部のチェック回覧を回すうちに、「リスクがある」「表現が気に入らない」と修正が入りまくる。
    • 結果、当たり障りのない、誰にも刺さらない「牙を抜かれたオオカミ」のような記事だけが量産される。
  • なぜ失敗するのか:
    • 「編集権」が確立されていないからです。Webの文脈を知らない全員が編集長気取りで口を出すと、コンテンツは「無難な広報誌」に成り下がります。
  • 【処方箋】編集権の独立(ガイドライン策定)
    • 「法的なNGライン(レギュレーション)」だけ厳格に決め、面白さや表現の判断は編集部に一任する合意形成が必要です。

パターン4:独りよがり型(プロダクトアウトの罠)

ユーザー不在のまま、自社の言いたいことだけを発信してしまうケースです。

  • 症状:
    • 記事の中身が自社商品の宣伝ばかり。
    • タイトルが「新機能のお知らせ」「展示会レポート」など、内輪ネタばかり。
  • なぜ失敗するのか:
    • 検索ユーザーは「自分の悩み」を解決しに来ているのであって、「あなたの会社の広告」を見に来ているわけではないからです。信頼を失い、二度と訪問されません。
  • 【処方箋】徹底した検索意図の分析
    • 「売り込み(Take)」を封印し、「価値提供(Give)」に徹する。自社商品は、課題解決の手段として最後にそっと添えるだけにする。

ユーザーの悩み(検索意図)を分析し、Googleに評価される構成案を作る具体的な手順は、以下の記事でテンプレート付きで解説しています。


【運用・仕組みの失敗】リソースと技術の欠如

最後は、継続するための体力と、成果を受け止める器(システム)の問題です。

パターン5:リソース破綻型(片手間運用の限界)

「書く」という作業の重さを甘く見積もった結果の末路です。

  • 症状:
    • 「社員が通常業務の合間に書けばいい(兼務)」という甘いスタート。
    • 最初の1ヶ月は頑張るが、本業の繁忙期に更新が止まり、そのまま放置。
    • 編集長(責任者)が不在で、クオリティが担保できない。
  • なぜ失敗するのか:
    • 質の高い記事を1本仕上げるには10時間以上かかります。片手間で勝てるほど甘い世界ではありません。
  • 【処方箋】外部パートナーの活用
    • 社員は「企画・チェック」に集中し、重たい「執筆・制作」はプロに外注する体制を作るのが、最も生存率が高い方法です。

自社に合った無理のない運用体制の選び方や、外注する場合の費用感については、以下の記事が参考になります。

パターン6:片手落ち型(記事と箱の分断)

記事は頑張っているのに、サイトの作りが悪くて成果が出ないケースです。

  • 症状:
    • 記事制作会社に頼んで記事は増えたが、サイトが使いにくくCV(問い合わせ)しない。
    • デザイン重視のWeb制作会社に頼んだ結果、SEO設計(hタグ構造や内部リンク)がめちゃくちゃ。
  • なぜ失敗するのか:
    • 「Web制作(システム)」と「コンテンツ(編集)」の連携が取れていないからです。
  • 【処方箋】ワンストップ改善
    • 「記事の内容に合わせてCVボタンを変える」「SEOのためにカテゴリ構造を変える」など、システムとコンテンツを両輪で回せるパートナーを選ぶ。

記事の内容に合わせてCVボタンを変えるなど、Web制作とコンテンツを連動させてリード獲得数を増やす具体的な施策はこちらです。


失敗状態からの再生(リニューアル)ロードマップ

もし今、自社のメディアがこれらのパターンに当てはまっているなら、一度立ち止まって「修理」が必要です。

  1. ボトルの特定(診断):戦略(パターン1,2)、体制(パターン3,5)、中身(パターン4)、仕組み(パターン6)。どこが致命傷なのかを特定する。
  2. 聖域なき見直し:場合によっては「SEOをやめる(ブランド特化にする)」や「過去記事を削除する」というドラスティックな戦略転換も必要です。
  3. ガイドライン策定:社内政治や迷走を防ぐための「メディア憲法」を制定し、再スタートを切ります。

STSデジタルは「構造的な失敗」を防ぐ

株式会社STSデジタルのオウンドメディア支援は、単なる「記事代行」ではありません。

失敗の根本原因となる「戦略の矛盾」や「体制の不備」から解決します。

  • 戦略支援: 「SEOを取るかブランドを取るか」の初期設計から介入し、無理のないKGIを設定します。
  • 編集体制: 第三者のプロとして参画することで、社内のしがらみを突破し、成果が出るコンテンツ品質を担保します。
  • 技術×コンテンツ: Web制作会社としての開発力と、コンテンツ制作力をワンストップで提供し、「片手落ち」を防ぎます。

「更新が止まってしまったメディアを再生したい」

「今のやり方で合っているのか診断してほしい」

そんな方は、ぜひ一度無料相談をご活用ください。貴社のメディアが陥っている失敗パターンを特定し、再生への道筋をご提案します。

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