「オウンドメディアの記事を一生懸命書いたのに、滞在時間が伸びない」 「SNSでシェアはされるけれど、クリック(流入)に繋がらない」 「渾身のプレスリリースが、なかなかメディアに取り上げられない」
日々コンテンツ制作に励むマーケターや広報担当者にとって、こうした悩みは尽きないものです。
実はその原因、記事の内容ではなく「情報の伝え方」にあるかもしれません。現代のユーザーは忙しく、文字だけの情報をじっくり読み込む時間は年々減っています。
そこで今、改めて注目されている最強の武器が「インフォグラフィックス」です。
単なる「綺麗な挿絵」ではありません。正しく活用すれば、PV(ページビュー)、滞在時間、そしてCV(コンバージョン)という「数字」を劇的に変えるマーケティングツールになります。
今回は、デザインの専門知識がないマーケターでも実践できる、成果に直結するインフォグラフィックス活用の鉄則を解説します。
なぜ「数字」が変わるのか? マーケターが注目すべき3つの効果
まずは、インフォグラフィックスを導入することで、具体的にどのようなKPI(重要業績評価指標)に影響があるのかを見ていきましょう。
1. 滞在時間の延長と直帰率の改善
文字がびっしり詰まったページを開いた瞬間、「うっ…」となってブラウザバックした経験はありませんか? インフォグラフィックスには、「スクロールの手を止めさせる(Thumb-stopping)」効果があります。

記事の冒頭やセクションの区切りに「要約図解」があるだけで、読者の心理的ハードルは下がります。「この図ならわかりやすそうだ」と興味を惹きつけ、結果として記事全体の滞在時間を伸ばし、直帰率を下げる効果が期待できます。
2. 被リンク獲得によるSEO効果
SEO(検索エンジン最適化)において、外部サイトからの被リンク(バックリンク)は依然として重要な指標です。
実は、高品質なインフォグラフィックスは「リンクのネタ」として非常に優秀です。他社のブログやニュースサイトが記事を書く際、あなたの作った「わかりやすい市場データ図解」や「カオスマップ」は、引用元として非常に使い勝手が良いからです。
「画像出典:〇〇社」としてリンクが貼られることでドメインパワーが向上し、サイト全体の検索順位アップに貢献します。
3. SNSでの拡散とCTR(クリック率)向上
人間の脳は、テキスト情報の処理よりも画像情報の処理の方が圧倒的に速いと言われています。 Twitter(X)やFacebookなどのタイムラインにおいて、テキストだけの投稿よりも、インフォグラフィックス付きの投稿の方がエンゲージメントが高くなるのはこのためです。
一瞬で「有益な情報だ」と判断させることができれば、シェアの確率は上がり、Webサイトへのクリック率(CTR)も向上します。

「ただの絵」で終わらせない!成果を出すための「3つの鉄則」
インフォグラフィックス制作をデザイナーに丸投げしていませんか? 「おしゃれだけど、何を伝えたいかわからない画像」になってしまっては意味がありません。成果を出すためには、マーケター自身が以下の3つの鉄則をコントロールする必要があります。
鉄則1:ワンメッセージ・ワンゴール(情報は捨てる勇気)
最も陥りやすい失敗が「あれもこれも詰め込みすぎる」ことです。 1枚の画像に、市場背景も、競合比較も、自社の強みも…と盛り込むと、結局何も伝わりません。
- ターゲットは誰か?
- この画像を見て、どう思ってほしいか?(驚き? 納得? 信頼?)
これらを明確にし、「1枚につきメッセージは1つ」に絞ってください。不要な情報は、たとえ苦労して集めたデータでも削除する勇気が必要です。
鉄則2:データの「文脈」をデザインする
ただExcelのグラフを貼り付けるのはインフォグラフィックスではありません。マーケターの仕事は、データに「ストーリー(文脈)」を持たせることです。
- 成長を強調したいなら:右肩上がりの矢印を大きく配置する。
- 危機感を煽りたいなら:ネガティブなデータ部分を赤色で強調する。
- 比較させたいなら:AとBを対比構造で並べる。
「数値」そのものではなく、そこから導き出される「結論」が一目でわかるように構成案を作りましょう。
鉄則3:スマホファーストの視認性
BtoB、BtoC問わず、閲覧環境の多くはスマートフォンです。 PCの大画面で作成していると気付きにくいのですが、スマホで見ると「文字が小さすぎて読めない」「要素が細かすぎる」というケースが多発します。
公開前に必ずスマホの実機で確認し、「ピンチアウト(拡大)しなくても文字が読めるか」をチェックしてください。これができていないと、SNSで拡散されても離脱の原因になります。
【実践編】明日から使える活用シーン3選
では、具体的にどのような場面で使えばよいのでしょうか。すぐに実践できるアイデアを3つ紹介します。
① ホワイトペーパーの要約 × LP(ランディングページ)
リード獲得のためのホワイトペーパー(資料)。その中身の「最も美味しい部分」をインフォグラフィックスにして、ダウンロードページ(LP)に掲載しましょう。 「中身が有益そう」と視覚的に伝わるため、ダウンロード率(CVR)の向上が見込めます。
② プレスリリース × メディア向け素材
記者は毎日膨大な数のプレスリリースを受け取っています。文章だけのリリースは読み飛ばされがちです。 リリースのトップに「サマリー画像」を用意し、記事内でそのまま使える解説図を提供することで、メディア掲載のハードルを下げることができます。
③ 過去記事のリサイクル × SNS
過去に書いた人気のブログ記事を眠らせておくのはもったいないです。 記事の要点を3〜4枚のインフォグラフィックス(カルーセル形式など)にまとめ直し、SNSに投稿してみてください。新たな層へのリーチが可能になり、過去記事への再流入を生み出します。
まとめ:インフォグラフィックスは「資産」になる
インフォグラフィックスは、単なるデザイン素材ではありません。 一度作成すれば、Webサイト、SNS、営業資料、ホワイトペーパーと、あらゆるチャネルで使い回せる強力な「マーケティング資産」になります。
「デザインセンスがないから…」と諦める必要はありません。現在はCanvaなどの便利なノンデザイナー向けツールも充実しています。
まずは、手元にある「複雑なデータ」や「伝えたいノウハウ」を、1枚の画像にすることから始めてみませんか? その1枚が、あなたのマーケティング活動を大きく加速させるはずです。
