コアウェブバイタルとは、GoogleがWebサイトの「読み込み体験」を数値化した3つの指標です。2024年3月に新しい指標「INP」が導入され、2025年現在は「表示の速さ」だけでなく「操作した時のキビキビ感」が強く求められています。
本記事では、ブラウザの内部動作に基づいた具体的な改善手法を詳しく解説します。
公式情報を確認したい方はGoogle-Core Web Vitals と Google 検索の検索結果についてをご覧ください。
1. コアウェブバイタル 3つの指標と合格ライン
Googleは、ユーザーがページを開いてから離脱するまでの「ストレス」を以下の3点で見積もっています。
| 指標名 | 測定内容 | 合格基準 |
| LCP(読み込み速度) | ページ内で最も大きい要素(画像や見出し)が表示されるまでの時間 | 2.5秒以内 |
| CLS(視覚的安定性) | 読み込み中に画像が遅れて入り、表示がガクッとズレる量 | 0.1以下 |
| INP(応答性) | クリックやタップに対して、画面が反応するまでの遅延時間 | 200ms以内 |
2. 自社サイトは合格?コアウェブバイタルの具体的なチェック方法
コアウェブバイタルを正確に測定するには、Googleが提供している無料ツールを使い分けるのが鉄則です。主に以下の3つのツールで確認します。
① PageSpeed Insights(特定のページの精密検査)
特定のURL(トップページや重要な記事ページなど)を個別に詳しく分析したい時に使います。
- 確認場所: PageSpeed Insights にURLを入力して分析。
- 見るべきポイント:
- 「コアウェブバイタルの評価」セクション: 過去28日間の実際のユーザー体験に基づいた合否判定が出ます。
- 「診断」セクション: どの画像がLCP(読み込み遅延)の原因か、どのスクリプトがINP(反応遅延)を邪魔しているか、具体的なファイル名まで特定して教えてくれます。
② Chrome DevTools:Lighthouse(開発中のリアルタイム確認)
リライトや修正を行った直後、まだデータが蓄積されていない段階で「改善の効果」をシミュレーションするのに使います。
- 確認方法: ブラウザのChromeで該当ページを開き、右クリック>「検証」>「Lighthouse」タブで測定。
- 注意点: これは「ラボデータ(シミュレーション値)」です。PCのスペックや通信環境に左右されるため、あくまで目安として活用します。
3. LCP(最大コンテンツの描画)の仕組みと改善
LCPは、ページの「顔」となる要素(ヒーロー画像や記事タイトル)がいつ表示されるかを測っています。
なぜLCPが悪化するのか
ブラウザはHTMLを上から順に読み取りますが、途中で「重いデータ」や「読み終わるまで次に進めないファイル」があると、そこで表示作業がストップしてしまいます。
具体的な改善策
- LCP要素の特定と「優先読み込み」:PageSpeed Insightsで「LCP」と判定された画像(多くはトップのアイキャッチ画像)を特定し、HTMLの<head>内でrel=”preload”を指定します。これにより、ブラウザは他のファイルを読み飛ばして、最優先でその画像をダウンロードします。
- 画像の軽量化(WebP・AVIF):古いJPEG形式ではなく、圧縮率の高い次世代フォーマットを使用します。高画質のままデータ量を30%〜50%削減できるため、単純にダウンロード時間が短縮されます。
- サーバー応答時間(TTFB)の短縮:ブラウザが「ページを見せて」とリクエストしてから、サーバーが最初のデータを返すまでの時間を削ります。高速なサーバーへの乗り換えや、キャッシュ(一度作ったページを保存して使い回す仕組み)の活用が有効です。
4. CLS(視覚的安定性)の仕組みと改善
CLSは、読み込みの途中で「突然画像が現れて、読んでいた文章が下に押し下げられる」不快な動きを数値化したものです。
なぜCLSが悪化するのか
ブラウザが画像を読み込む前に「その画像のサイズ」を知らないことが原因です。画像が後から表示された瞬間に、ブラウザが急いでスペースを確保しようとして、周囲の要素を突き飛ばします。
具体的な改善策
- 画像に「サイズ(width/height)」を明記する:HTMLの<img>タグに必ず幅と高さを記述します。<img src=”sample.jpg” width=”800″ height=”450″>これにより、画像がダウンロードされる前でも、ブラウザはその分の空白スペースを確保し、画面のズレを防ぎます。
- 広告枠の「高さ」を固定する:後から読み込まれるGoogleアドセンスなどの広告ユニットには、あらかじめCSSでmin-height(最低限の高さ)を設定しておきます。広告が表示されても、もともと確保していた枠内に収まるため、ズレが発生しません。
5. INP(応答性)の仕組みと改善
2024年から導入されたINPは、ボタンを押した時などに「ブラウザがどれだけ速く次の描画(反応)を返せるか」を測ります。
なぜINPが悪化するのか
ブラウザがJavaScript(動く仕掛けを作るプログラム)の実行に忙殺されていると、ユーザーのクリックを検知しても、すぐに反応を返せません。
具体的な改善策
- 「メインスレッド」を解放する:ブラウザが画面を描画したりプログラムを実行したりする「メインの作業場」を、一つの重い処理で占領させないようにします。長いプログラムは分割し、処理の合間に「ユーザーの入力を受け付ける隙間」を作ります。
- 未使用のJavaScriptの削除:使っていないプラグインや、過去に使っていた計測タグなどが残っていると、それだけでブラウザの処理能力を奪います。不要なスクリプトは徹底的に排除します。
6. 専門用語解説:レンダリングを妨げるリソースとは?
診断ツールでよく見かける「レンダリングを妨げるリソースの除外」について、具体的に解説します。
- 正体: ページ上部にあるCSS(デザイン指示書)とJavaScript(プログラム)のことです。
- なぜ妨げるのか: ブラウザは、CSSをすべて読み終わらないと「どんな色やレイアウトで描けばいいか」が決まらず、表示作業を一時中断します。JavaScriptも同様で、読み込みと実行が終わるまで、その下のHTMLの読み取りをストップさせてしまいます。
- 解決策:
- CSSの最小化: 不要なコードを削り、ファイルを軽くする。
- JavaScriptの遅延読み込み(defer/async): ページ表示に直接関係ないスクリプトは、HTMLを最後まで読み終わった後に実行するように設定する。
まとめ:CWV対策は「スムーズな閲覧」の追求
コアウェブバイタルを改善することは、Googleの順位を上げることだけが目的ではありません。
- LCPを改善する: ユーザーを待たせずに情報を出す。
- CLSを改善する: ユーザーをイライラさせない(誤操作させない)。
- INPを改善する: ユーザーの操作に心地よく反応する。
この3点を技術的にクリアすることで、最終的に「離脱率が下がり、成約率が上がる」という実利に直結します。

