株式会社STSデジタル

#15 ライターという生き物

さて、7月になり、STSデジタルは決算を終えて新しい1年に突入しました。
新しい仲間も入ってきて、なんだか社内は「さあ頑張ろう!気合いたっぷり!」みたいなムードです。

僕以外は。

そう、僕以外は。

いや、僕も頑張りたいし、それなりに頑張ってはいるんですけどね?

毎年のことなんですが、この時期になると、慢性的な頭痛が僕の頭をかち割ろうとしてくるんですよ。
いわゆる梅雨どきの片頭痛ですね。

閃輝暗点が起きたり、吐き気を催したりするほどではないので、軽度な片頭痛ではあるんですが、頭が痛いことに変わりはないし、慢性でずっと続くので日夜バファリンが手放せません。
おまけに最近は眼精疲労なのか紫外線が荒ぶってるのか知りませんが目が痛いし、溜まりに溜まった肩こりと首こりが炸裂しています。

体調は常にグロ。できることならラップトップなんてフリスビーにして放り投げてしまいたいというのが本音です。

とはいえ、本音なんて見向きもされないのがこの狂った世界の常なので、粛々と原稿を書かねばならないわけです。
そんなとき、僕を支えてくれる、とある漫画のとある言葉があります。

「万全の状態ならもっと早くいいものがつくれるか?……(中略)……そりゃそうだ でもそんな“万全”一生こねえぞ」

『左利きのエレン』(原作:かっぴー、絵:nifuni)に登場する超絶モンスターデザイナーの神谷雄介が、後輩である主人公の朝倉光一にかける言葉です。

ちなみに上記の台詞、ページをまたいでこう続きます。

「体調最悪でも 2日寝てなくても 友達に裏切られても 女にフラれても その中で歯くいしばってひねり出した仕事がお前の実力の全てだ」

めっちゃ厳しいことを言ってるみたいに見えますし、まあ実際にそうなんですけど、一介の文章屋として、共感しかありません。
初めて読んだのは、入社するずっと前、もう6年前とかになるんでしょうか。脳汁が出まくりで、とくとくと脈が早くなったのを今でも覚えています。

つまるところ、モノを作る人間として、作る過程に、出来栄えに、言い訳の余地なんてどこにもないってことなんです。
作ったものが全て。ライターらしく言うならば、書いたものが全て。

体調不良も親友の裏切りも、たとえば飼ってた犬が死んだって、僕らは書いた文章にまつわる全ての責任をたった1人で引き受けなきゃあかんのです。

なんとまあ、冷たい世界!
でもその冷たさが、孤独が、心地よくもあるから始末に負えない。

だって、“そこにあるべき正しい1文”が見つかったときの脳内麻薬の気持ちよさったら、他の何にも代えがたいんですもの。

ライターってのはたぶん、“いい文章”という霞を掴まえるために、文章の悪魔に魂をゆずってしまった、そういう変な生き物なんでしょう。

ちなみに、梅雨が明け、夏になって気温が上がり、日差しが強くなることで、僕の体調は死なない程度にますます悪くなっていきます。唯一冬だけが人並みに元気です。
でも“万全”なんてありませんから、今日も今日とてラップトップに向かうのです。今の自分にできる最高出力の1文、1語、1文字のために。

ライターは――とでっかい主語を使うとなんか恥ずかしいので遠慮がちに、少なくとも僕は、そういう生き方しか知らないのです。