株式会社STSデジタル

#14 好きを仕事にする

僕は2回生まれています。

1回目は、文字通りママンのお腹からおぎゃぁしたとき。
2回目は、大場美奈さんの存在を知り、彼女から「まゆっきー」という真名《マナ》を頂戴したとき。

僕が高校生のとき、AKB48は人気絶頂のグループ。
多くの高校生や大学生や社会人がそうしていたように、僕もなけなしのバイト代でCD100枚買って「推し」に会いに行っていた「オタク」でした。

そんな僕の当時の推しは、大場美奈さん。
彼女の手を握り、彼女とお話をし、歌って踊り、笑って泣く彼女を応援するためだけに生きていました。

そんなふうに、当時も多少認知はされていただろうけれど、もちろん大勢いるオタクのなかの1人でしかなかった僕は10数年の時を経て、再会を果たします。

推し事ではなく、お仕事のパートナーとして。
今日はそんな話です。

最近、社内で冷たい目を向けられ、こっそりと苦笑いされている(気がする)のだけど、自分の行いを省みれば、まあそれも当然でした。
そりゃあ勤務中にモニターを見ながらキャッキャウフフしている奴がいれば、白い目を向けたくもなりますね。

そのキャッキャウフフしている奴というのがつまり僕。

何をそんなに浮ついているのかと言えば、ずっと温めていた企画をケムールというWebメディアで始めさせてもらったことに理由があります。

ケムール
大場美奈のぶっちゃけトーク【推してた人・推されてた人】第1回 「元」アイドルと「元」ヲタク。 もう現役じゃないからこそ話せる、本音や思い出がたくさんあるんです。 […]

中身をもらえると分かる通り、取材中もかなり気持ち悪くキャッキャウフフしてますね。
もちろん誓って遊んではおりません。あくまで仕事。そう、仕事です(大事なことなので繰り返す)。

とはいえ、正直言って楽しいです。仕事に優劣をつけるつもりはないけれど、もうめっちゃ楽しい。遊んでいると思われても仕方ないかもしれないし、もうそんな周りの目なんてどうでもよくなるくらい楽しい。

だって、仕事にかこつけて“あのころの裏話”なんて聞けちゃうんだから、楽しくないわけがないじゃないですか。
なんなら取材しているときは終始眼福なので左右ガチャ目の視力が回復している気さえします。

職権乱用上等である。

今回を通じて思ったのは、たとえどれほど白い目で見られようとも、「好き」は立派な個性だということ。

取材のできるライターはこの世に星の数ほどいるけれど、みなるんと100回握手してもらったライターというのはたぶんそんなにいないんじゃないでしょうか。
100回握手して青春フルコミットで時間とお金を費やした僕だからこそ聞ける話があり、書ける文章があり、伝えられる熱があるというのは、信じられないようだけどガチの事実です。

もちろん「好き」が仕事になると、辛いこともいっぱいあります。
むしろそもそも仕事は辛いです。労働は地獄です。
カンダタの蜘蛛の糸よろしく、地獄で見る微かな希望の1つが、……と言えば大げさかもしれないですが、仕事をほんの少し楽しく前向きなものに変える1つの方法がきっと今回のような「好き」なんじゃないかなと思います。

少し前に野崎まどさんの『タイタン』という小説を読みました。
タイトルにもなっているAI〈タイタン〉の恩恵で全てが自動化された結果、人類が仕事から解放されるという夢のような未来を舞台に、主人公は突然機能不全に陥ってしまったAIのカウンセリングを「仕事」として請け負うことになる――という話で、超面白いのでオススメなんですけどそれはそれとして。

物語のなかで主人公はカウンセリングを通じて「仕事とは何か」という問いに向き合っていきます。そして「仕事とは移動なのではないか」みたいな考えに行きあたるんですね。

読んだときも「なんとまあ面白い考えだ」とは思いましたが、少し時間を空けて、今ならなおさら腑に落ちます。

まずは自分の心が動くこと。
忘れがちかもしれないけれど、仕事の第一歩ってそんなところにあるような気がします。
推しに鼻の下を伸ばしながら、そんなことを思ったり思わなかったりしたんでした。

ケムール
大場美奈のぶっちゃけトーク【推してた人・推されてた人】第1回 「元」アイドルと「元」ヲタク。 もう現役じゃないからこそ話せる、本音や思い出がたくさんあるんです。 […]