株式会社STSデジタル

#8 伝えることの難しさについて

社長の目タイトル画像

まだ初めて2か月のこのコラムだが、実に多くの人が読んでくれていることに感謝したい。
先日も、グループ会社で現在海外に赴任している若者がこのコラムを読んでくれていると人伝で聞いた。
ありがとう!!いや、Thank you. かな?

こうして伝えられる感想や読者の存在は、それなりに目まぐるしい日々を送っているなかでもこのコラムの執筆へ向かう確かな原動力になっていることは間違いない。

さて、本題に入っていこう。

つい先日こんなことがあった。
ある社員に仕事の進め方でアドバイスをしていたところ、前提に立っている常識があまりにも違うから怒っているように見えたと新しく入った別の社員に指摘された。
実際に普通の事を指摘したのだが、アドバイスを受けていた社員ががっくりと萎んでいたため怒ってる感がでていたようだ。
もちろん怒鳴っていたわけでも、語気を強めていたわけでもなく、私自身にそんなつもりはない。

『赤信号は止まれだよ』と伝えたつもりだった。

しかしそれを指摘され、落ち込んでしまい周囲から怒られてるように見えてしまっていたらしい。
すごく衝撃的な出来事だったが、長年にわたり腑に落ちなかったことが一気にスっとすべて理解できた。

人と人との間に常識落差というものが存在する。

私たちの間にある常識の落差

弊社では定期的に各セクションのチームが揃ってのミーティングを行っている。
当初は私も出席し、アドバイスや改善案を出したりしていたが、現在は出席していない。これは私が出席し発言するとそれが問答無用で正解になってしまい、各々の考える力を養ったり、社員間で議論を交わしたりすることが難しくなるという申し出があったためだ。

これも常識落差の問題で解決できる。

常識落差がありすぎると議論にならないのだ。

伝える側と伝えられる側にある常識や前提、経験の違いは私が思っているよりも遥かにコミュニケーションを困難なものにしているのかもしれないと感じた。

違う価値観や考えを持った人間が集まることで新しいイノベーションが生まれていくことは組織の強みでもある。
しかしこうした違いもあまりに度が過ぎれば、すれ違いを生み、不和や歪みをもたらすことになる。
だからある程度は共通した常識や価値観の上に皆が立つことが成熟した組織には必須なのではないかと思う。

成熟した組織のために

もちろん最初から経験が豊富な人間も、ビジネスに対して高い解像度を持っている人間は存在しない。
これらはチームや企業という組織のなかで同じ目標を共有して働くなかで身についていくものだ。

とはいえ、経験が蓄積され、常識やスタンダードがアップデートされていくことには時間がかかる。
会社に限らず、出来たばかりの多くの組織が不和を抱えたり、時に空中分解してしまったりするのは、常識の齟齬を一致させるために必要な時間に耐えることができなかったからではないだろうか。

ならば経営者として、私に何ができるのか。

私たちのような設立間もない企業では、常識が身につくまで耐えうるだけの売上を確保できるかどうかが会社としての生き残りのカギなのではないかと思う。
成長産業やトレンド性のある仕事に取り組み、その間に人が育ち、組織が成熟する。

企業の組織としての成熟は、そういう意識の部分のアップデートと深く関係しているような気がする。

逆に需要があり、未熟者でも許される事業を行っている会社しか生き残れないと考えた。

起業10年生存率はこの辺と結びついているのではないかと思われる。

もちろん私自身、力不足の面がある。
社長という立場を踏まえ、アドバイスの仕方が適切だったのかなど、改めて省みるべき部分だってある。
しかしこうした自己認識ができたことには意味があるはずだ。まずは私自身がこの学びを第1歩とし、自分自身の成熟に繋げよう。