株式会社STSデジタル

#18 文字メディアは“オワコン”?

弊社はご存知の通り、Webマーケティング全般を支援している会社です。
クライアントのニーズや抱えている問題に合わせて、セールスチームがあれこれとソリューションをオーダーメイドしていくわけですが、Webサイト制作やら広告運用やらSEO記事制作やら、まあだいたい何でもできます。

そのなかでも、僕らライターチームが担っている主要なフィールドがインタビュー記事制作。
話を聞いて、記事を書くというやつです。

とはいえ、ここ最近はインタビュー記事の制作に加えて、インタビュー動画制作の引き合いが非常に増えているような気がします(肌感)。
たしかに動画はトレンドですし、特に若い世代への訴求力は高い傾向にありますから、新卒採用サイトのメッセージや、ティーン~20代向けの商品PRとして使ったりするのは超有効だと思います。

とはいえ、どんなものも一長一短。

そもそも記事と動画、同じように何かを伝える手段ではありますが、性質が全然違います。
だからどっちが優れているかとか、そんなことを比べることがそもそもナンセンス。

なので、盛り上がってるのは動画かもしれませんが、記事が“オワコン”だからなくなっていく――なんてことにはなりえません。

そこで今回は、じゃあ何が違うのかということを、制作側を担う僕の視点から書いていきたいと思います。

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費用とか制作時の注意点とか、違いをあげれば朝までいけるくらい無数にあるのですが、僕が最も大きな違いだと思っているのが「編集(情報の加工)の自由さ」です。

当然ですが、動画では、言っていないことを言ったことにすることは今のところできません(AIの進歩でもしかしたら、そのうちばっちりできるようになるのかもしれませんが)。

もちろん動画編集でも、発言を切り出したり、トピックの順番を入れ替えたりすることでより的確にメッセージが伝わるように手が加えますが、そもそも音(発言)がなければ編集できませんし、発言の“修正”ができないので間違ったことを口にしていれば該当箇所は没になったり、テロップで訂正したりするしかありません。

また、カメラの前で話すというのは思いのほか難しく、普段なら流暢に軽いジョークを交えながら話せるような弁の立つ人であっても、普段通りに話すことができないこともしばしば。
あるいはポップに見せたい動画なのに、どうしても真面目で固い印象の語り方になってしまったり、その逆もよくあります。

つまるところ、動画撮影の場合、カメラが回っているあいだ、スピーカーはある種の演技・演出を続ける必要がどうしてもでてくるということです。

ただし、身振り手振りや声のトーン、服装など様々な演出が上手くいけば、記事よりも遥かに多くの情報を伝えたり、スピーカーの雰囲気、会社の空気などより“生の情報”を視聴者に伝えることができます。

これは記事で出すのはなかなかに難しい、動画の大きなアドバンテージと言えるでしょう。

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一方、記事制作ではインタビュー音源を文字に起こし、読み物として再構成することで徐々に輪郭が作っていきます。
何を隠そう、この“再構成”というのがインタビュー記事の肝。

そもそも採用メッセージなどの場合、すでに述べた通り、ごく普通の社員がインタビュー慣れしていることはほぼありえませんから、発言がぼそぼそしていて要領を得なかったり、多少間違ったことを言ってしまったり、ということはよくあります。

言ってしまえばスピーカーとしての“素人くささ”みたいなものを抜き、伝えたいメッセージをより的確に、構成し直すことができるのがインタビュー記事を初めとする文字メディアの最大の強みです。

たとえば、発言の内容を補強するデータや数値をどこからか引っ張ってきて説得力を増す。
あるいは、和気あいあいと楽しく行ったインタビューを、真面目でソリッドな空気に変更する。
もしくは、曖昧な発言を解釈して、伝わりやすいかたちに再構成するなんてことまでできる。

文字(+写真)に情報を絞るからこそ、方針に合わせて大胆かつ自由な編集ができるのは、動画に対する記事の大きなアドバンテージです。

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記事と動画、〈伝える〉という目的は同じですが、その性質や強みは大きく異なります。

出演者も制作の一旦を担っているという意識で演出やトークに臨めるのなら動画はもってこいの手段ですし、手っ取り早く分かりやすくメッセージを伝える手段がほしいなら記事として世に出すのが最適、といったところでしょうか。

今回はインタビューの記事と動画を取り上げましたが、マンガでPRしたっていいし、小説風のエモい記事にメッセージを乗せたっていいし、Vtuberを使ったっていい。
どれだけ素敵なメッセージを込めていても、伝え方を間違えれば伝わらなくなってしまうことは、改めて言うまでもありません。

安易にトレンドに乗っかるのではなく、思考停止で文字メディアに固執するでもなく。

「どうやって伝えるか」を考えて選ぶことは「何を伝えるか」というメッセージの中身と同じくらい、そのメッセージが伝わるかどうかを左右する決定的な要素と言えるのです。